近年、国産時計の雄であるセイコーがラインナップの再編を行っているようで、多くのモデルが終売やモデルチェンジになっています。
そのような中、今回もセイコーの隠れた名品である「セイコーアルピニスト(SARB017)」を終売ギリギリでゲットできたので、ご紹介させて頂きたいと思います。
セイコーのアナログスポーツウォッチの名品アルピニスト(SEIKO Alpinist)とその歴史について
「セイコーアルピニスト」の誕生と名作「4Sアルピニスト」について
セイコーアルピニストは同社が1959年~1960年代に展開していた同名の時計が元となっており、「アルピニスト」のロゴと「三連山マーク」が目印となっていました。
当時のアルピニストは現在のアルピニストとはデザインもかなり異なっており、夜光と加えて高い防水性を持つアウトドアでの使用に耐えうる機械式時計といったものだったようです。
4SアルピニストことSCVF009
引用;https://tokei.blog/japanwatch/seiko/19503
その後、セイコーにおけるアルピニストの系譜は一旦途絶えますが、1995年に再びアルピニストの名を冠するモデルが発売されます。
この1995年版アルピニストは当時の高級モデルにも採用されるムーブメント4S15を採用していたことから4Sアルピニストと呼ばれ、現在でもアンティーク市場などで非常に人気があります。
また、この4Sアルピニストこそが現在も続く「セイコーアルピニスト」の流れを作ったモデルでもあり、コブラ針や簡易方位計つき内転リング、偶数のみアラビア文字のインデックス(黒文字盤を除く)など様々な特徴的な仕様を持っています。
一方で、文字盤にはアルピニストのロゴが赤文字で記され、裏蓋には三連山マークもあり、初代アルピニストへのリスペクトも感じる良デザインであると思います。
4Sアルピニストはシンプルな黒とベージュの他に、独特な緑の文字盤のモデルが展開されえていました。
この緑色の文字盤は「アーモンドグリーン」と呼ばれる独特な色であり、当時のセイコーのデザイナーの方が所有していたミニローバーの色から採用したものだそうです。
そして、この独特な魅力を持つ緑色の文字盤は「セイコーアルピニスト」のイメージカラーとなっていきます。
しかし、この4Sアルピニストは販売当初から人気であったにもかかわらず、その4Sムーブメントの生産性の悪さからすぐに廃版となってしまいます。
その後、セイコーアルピニストはクオーツのモデルなどで細々と販売を続けられますが、定着には至らなかったようです。
そんなセイコーアルピニストですが、2006年にセイコーメカニカルというラインの1モデルとして復活を遂げます。
そのモデルこそが今回ご紹介する通称「6Rアルピニスト」であり、アルピニストの地位を確固たるものにしたセイコーの定番機械式時計です。
今回ご紹介するSARB017を代表とする「6Rアルピニスト」とは
2006年に誕生した6Rアルピニストは、その名の通り現在のセイコーの中級ムーブメントである6R15を採用し、デザインやそのスペックなどは4Sアルピニストの焼き直しといった仕様となっています。
細かいところでは4Sと異なる点はありますが、外観上の大きな変化はケース径の拡大やアルピニストロゴと日付表示のサイクロップスレンズの廃止などがあげられるかと思います。
一方、アーモンドグリーンを含む文字盤のカラー展開や、裏蓋の三連山マークなども含めても4Sアルピニストと大きく印象は変わらないモデルであると感じます。
この6Rアルピニストは6Rムーブメントを採用したことによって安定供給が可能になり、発売から10年以上も作り続けられるセイコーの定番モデルとなります。
特に先述のアーモンドグリーンのモデルは非常に人気が高く、セイコー自身が「セイコー史上、最も謎めく緑の時計。」と評するにまで至ります。
そんな6Rアルピニスト(SARB017)ですが、現在セイコーが進めているブランド再編の流れから、2018年より他のセイコーメカニカルのモデルと共に生産終了となってしまいました。
しかし、2020年にプロスペックスラインから4S、6Rアルピニストを踏襲したアルピニストの新型が発売され(以後、プロスペックスアルピニスト)、その歴史は継続することとなりました。
プロスペックスアルピニストと旧アルピニスト(SARB017)の比較について
写真は緑文字盤(SBDC091)
引用;https://item.rakuten.co.jp/tokeikan/sbdc091/
まず、新型のプロスペックスアルピニストはのカラー展開は前作から引き続き、黒文字盤(SBDC087)、白文字盤(SBDC089)、緑文字盤(SBDC091)の三色になります。
デザイン上も大きな変化はなく、サイクロップスレンズの復活と文字盤上にプロスペックスラインのロゴである「X」マークが追加されたことくらいかと思います。
(この「X」マークはアルピニストの雰囲気を壊さないよう細文字で描かれていますが、、、個人的にはこれが嫌で新型を購入しました。)
ムーブメントは先代の6R15からパワーリザーブが20時間伸びた6R35に変更になっていますが、精度等の大きな変化はなさそうです。
また、裏蓋がシースルーバックになっており、歴代のアルピニストの伝統であった「三連山マーク」は廃止となったようです。
スペックは20気圧防水と簡易方位計つき内転リングと変更はなく、風防については前作から引き続きサファイヤガラス製です。
(今作から風防に無反射コーティングが追加されているようです。)
このように今回の新作であるプロスペックスアルピニストと前作に当たる6Rアルピニストでは大きな変化はなく、新型も歴代セイコーアルピニストの一本であることは間違いがありません。
しかし、プロスペックスアルピニストの価格は税込み8万円を超えており、コアショップ限定での取り扱いのため大きな値引きが期待できないという問題があります。
(現在の時計業界を考えれば仕方がない部分もありますが…。)
今現在、緑文字盤の6Rアルピニストであればネット上でまだ5万円ほどで手に入るため、新型の値段が気になる方は私のように滑り込みで購入するのもありかと思います。
私の所有するセイコーアルピニスト(SARB0017)のご紹介
基本情報
Brand:SEIKO MECHANICAL Alpinist
Model:SARB017
Caribre:6R15
上で散々ご紹介してきましたが基本的なスペックとしては、デイト付きの自動巻きの3針モデルになります。
採用されるムーブメントはセイコーの現在の中価格帯モデルに採用されることの多い6R15であり、個体によってはクロノメーター級の精度を出すこともあるようです。
ケース径は39.5mmと現代でも使い易いながらも、大きすぎることのない絶妙なサイズ感です。
その他、簡易方位計つき内転リングに20気圧(200m)防水など、アウトドアにも耐えうる仕様となっています。
しかし、その最大の特徴はコブラ針とゴールドのインデックスからなる、この独特のデザインにあるかと思います。
また前述の通り、ミニローバーの車体の色を模したというアーモンドグリーンの文字盤は英国的な雰囲気があり上品な印象を与えてくれます。
特にサンバースト(サンレイ)仕上げによって見る角度によって異なる表情を見せるので、日光の下ではさらに格別です。
さらには、この6Rアルピニストのデザイナーの方はフライフィッシングを趣味にされており、この時計にも英国カントリーのイメージを落とし込んでいるそうなので、より一層そのテイストを感じます。
私自身この時計の存在を知った時点でバブアーやツイードのジャケットとの相性が最高であると思い、知った日の内にその勢いで購入に至っています。
(イギリスのクラシックなアイテムに合う時計を所有しておらず、革ベルトのクラシックな時計を探しているところに出会ったといった形でした。)
この価格帯で歴史とストーリー性のある時計というのは中々珍しく、この時計の持つ雰囲気を含めてイギリスのアイテムに合わせたくなる一本であると思います。
6Rアルピニスト(SARB017)の欠点について
基本的にはコスパの高さも含めてべた褒めの時計ですが、何点か欠点とも言える部分が存在します。
まず一点目としては、簡易方位計つき内転リング(インナーベゼル)の操作感が非常に軽いことです。
簡易方位計つき内転リングは4時位置のりゅうずを回すことで操作するのですが、ギアが噛んでいるような操作感ではなく簡単に動いてしまします。
そのため、気が付いたら内点リングはズレているといったことも多く、実用性はもちろん文字盤上の収まりの悪さが若干気になります。
二点目としては、よく言われていることになるのですが純正の革ベルトのフィット感が非常に悪いことがあげられます。
恐らくパットが厚いことが原因かと思われますがベルトのラグ付近に最初はどうしても曲がらない部分があり、これを無理やり馴染ませていくことになります。
現在では革も内部のクッションも馴染みましたが、お世辞にも質感がよいとは言えないベルトなので今後交換したいと思っています。
この時計は非常に気に入っているので、本物のクロコダイル製のバンドにプッシュ式のDバックル仕様にしようと妄想中です。
(純正の革ベルトは牛革にクロコの型押しです。)
最後にこれは個体差によるところもありますが、夜光とインデックスが微妙にずれている点が気になります。
これはネット上の写真を見ても散見されることですが、私のモデルでは8時のインデックスと夜光の位置が少しずれています。
言われないと気にならない程度であり、価格帯を考えると仕方がない部分もあるかとは思いますが少し残念な気持ちにはなります。
最後に
予想以上に長々と書き連ねてしましましたが、このセイコーアルピニストは特殊な一本でありながら多くのファンによって生きながらえてきた本物の名品であると思います。
そしてその魅力は実際に手にすることでよりじわじわと感じる部分もあり、非常に長く愛することのできる一本でもあると思います。
この「セイコーアルピニスト」は、新型も含めて非常に魅力的な時計であると思いますので心からおすすめです!
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